ソニーとアップル。同じエレクトロニックを扱う企業として比較される事か多い。最近では、躍進するアップル、衰退するソニーといった言葉で扱われる事が多いが、故「スティーブジョブス氏」が尊敬していたソニーの経営者であった「井深大氏」と「盛田昭夫氏」。アップルがiPodで音楽業界を一遍したように、そのはるか前にウォークマンで音楽を持ち運ぶというライフスタイルを構築した。しかし、アップルがiPhoneで絶好調の中で、ソニーは苦戦が続いている。



本書は、そんなアップルとソニーを比較する面白い本だ。

例えば、ソニーが衰退した背景には経営陣の官僚化があった。面白い話として、中鉢氏が社長だった時代、新型のウォークマンを発表する会場でハプニングが起きた。それは、手に持っているウォークマンが上下逆さまだったのだ。自身でウォークマンを愛用していれば当然のように、この事には気づいたと思う。アップルの発表会ではありえないミスだ。巨大企業となり商品への愛を忘れたソニー。本当かは定かではないが、ストリンガー氏の時にも同じ事が起こっていたそうだと、本書には綴っている。

アップルはよく「ソフトの会社」と言われる。iPhoneに搭載されるiOS、そのアプリを販売するApp Store、そして音楽を販売するiTunes。しかし、アップルの売り上げ比率を見ると、ソフト部門は全体では10%も満たない事が分かる。ハードを売る事で儲けるのがアップルの戦略なのだ。圧倒的な販売数を武器に世界中でパーツを調達する。面白い話として、発売直後のiPhoneとモデル末期のiPhoneでは使用されている部品に微妙な違いがあるそうだ。より安くより高性能のパーツをどん欲に探す姿勢が見え隠れする。

今のソニーがどんな会社かと言えば、BtoCではなくBtoBの方が稼いでいる印象がある。例えば、iPhoneのカメラが4S以降格段に奇麗になった背景には、ソニーのイメージセンサーがある。ソニーは自社のカメラだけではなく、他社のカメラ向けにカメラの目であるイメージセンサーを販売している。世界屈指の放送機材メーカーとしても知られる。

ソニーが衰退した背景にはその歴史が大きく関与してくる。骨肉精神が削がれ、お金を稼ぐ事、そして売る事そのものが目的になってしまった。別の本だけど、経営陣は自分の利益や保身が大切。特に、今だソニーに居座るストリンガー氏からの背景は大きい。平井体制になって何が変わるのかは不明ですが、アップルの凄さは商品数の少なさというよりも、製品についての愛情だろう。自分が欲しいもの、人が欲しいものを提供する。その上で利益が生まれる事が重視される。

お金で人の心は買えないかもしれない。
でも、感動で人の心は買えるのかもしれない。

ソニーとアップル。比較してみると、似ているようで、目指している方向は違うのかもしれない。それが面白い。