少し前まで宇宙旅行というのはロケットで行く事が当たり前だった。初期の頃で言えばアポロであったり、最近ではスペースシャトルだったりする。しかし、もし宇宙旅行がエレベーターで行けるようになったら?これが本書のテーマにもなっている「宇宙エレベーター」だ。元々この構想自体は、アーサー・C・クラーク著1979年出版の「楽園の泉」の頃(正確に言うと、構想自体は100年前からあるらしい)からあった。実際、宇宙エレベーターを現在の技術で作れば予算は1兆円〜2兆円ほどで完成するそうだ。


今まで宇宙エレベーターが実現しなかった背景には、エレベーターを支える素材が存在していなかった事が大きい。ただ最近になって発見されたカーボンナノチューブ、この発見によって理論的には宇宙エレベーターは現実的なものになった。多くの読者の方が(どうやってロープを支えるのか?)という部分に注目するだろうが、宇宙、それも静止衛星軌道のもっと上、高度5万メートルや10万メートルという高さになると、地球の遠心力によって自然と自立するそうだ。

日本に宇宙エレベーターがっ?と期待する読者がいるかもれないが、宇宙エレベーターは軌道的に赤道付近に作るのが理想だそうだ。ロケットではダメなのか?一番の魅力は何と言っても今までにない大量輸送が可能になるという点だろう。今現在、宇宙に500mlのペットボトルのお茶を送るだけでも50万円はかかる。

ただ、そのためにはエレベーターの下降の際に生じる熱をどうするのか?バンアレン帯における放射能の問題。エレベーターを動かす動力の確保など、やる事は沢山ある。その上で「エレベーターのロープか切れた場合はどうするか?」「宇宙ゴミに衝突した場合?」といった諸問題もある。

宇宙エレベーターが注目される最大の背景には資源という問題も絡んでくるそうだ。最近になって中国やロシアが月面の有人飛行に意欲的なもの「核融合」(つまり太陽と同じ)のためにヘリウム3(地球で殆ど取れない)が必要だからだ、そのためには、ロケットではあまりにも非効率すぎる。その点でも宇宙エレベーターに注目が集まっている。

本書は宇宙エレベーターについての本だが、あまり未来や希望については語らない。本書はタイトルにもあるように、宇宙エレベーターの技術について書かれている。ある意味で専門書なので、万人受けする本ではないとも思ったりする。