テレビはスマートフォンに負けた。そんな冒頭で始まる本書は、元フジテレビアナウンサーが綴るテレビ業界の裏話が満載です。まず冒頭で綴られる「いいとも!」終了の裏側。そして、アナウンサーや報道そしてバラエティまで業界のタブーに迫る内容です。ボクはあまり詳しくは知りませんが、長谷川さんは「ある横領事件」(本人は否定しているらしい)の件で、フジテレビを辞めたそうです。その分だけ綴られている事はせきららで、それが本書に良い味を出していると思います。

●いいとも!終了の裏側。

これは結構衝撃的な事実でしたが、「笑っていいとも!」の終了はある意味で必然だったと言います。既に90年代後半から、笑っていいとも!はフジテレビのお荷物とされていたそうです。勿論、タモリさんの高額なギャラ。そしてフジテレビではなく、アルタスタジオで放送されていた事も経費的に重荷になっていたそうです。それに加えて、台頭する各局の番組。本書ではまず筆頭に「ヒルナンデス」を挙げます。人気女子アナで1位を獲得するまでになった水うらアナ(ごめん変換で出なかった。)いいともの視聴率は低迷し、末期的だった。

その上で面白い話が、いいとも終了の発表の日が実は、フジテレビが怒られる日だったという事実。遡れば27時間テレビで極楽の加藤さんがAKB48のまゆゆの頭を蹴った件。あの件でBPOから怒られる日が、いいともの終了発表の日だった。著者曰く、意図的に仕組んだのでは?という話。

●あいのりが終了した理由。

深夜で爆発的な人気を誇った恋愛観察バラエティー「あいのり」。ボクら世代から言えば、「SMAP×SMAP」→「あいのり」という流れはある意味で鉄板だったわけですが、この番組の終了もずばりは「お金がかかりすぎる」という事だったそうです。まず海外にロケに行くのにお金が掛かりますし、滞在費。当然、出演者だけではなく、ADやディレクター、カメラなど数十人単位で人が動くわけで、たぶん人気絶頂の時はそれが成り立っていたのかもしれないけど、視聴率が下がると途端に成り立たなくなる。最近のテレビがつまらない背景には、こういった低予算化の流れも否めない。その一方で、躍進する日テレにおける「イッテQ」の登山部。エベレスト登頂は延期されましたが、やはりお金のかかった番組が面白いというのは、ある意味で事実だと思います。

●カトパンの年収800万円説。

これはよく暴露したなって思いました。カトパンと言えば押しも押されぬ超人気アナなわけですが、社員という事もあって実際の年収は800万円ほどだそうです。ハイヤーやタクシーを利用しているのか思いきや、フジテレビまでゆりかもめで通勤している姿がある。早く独立した方がいい。それが著者の提案なわけですが、華やかな世界がある一方でこういった現実もある。

●コンテンツを面白くするのもつまなくするのも金。

という事を昔書いた記憶がある。ネット配信が云々という以前に、やはり面白い物はTwitterやFacebookで拡散する。それこそ、「天空の城ラピュタ」で言う「バルス」なわけで、やっぱり面白いモノは面白い。それはマスからネットに移行しても変わらないと思います。後半ちょっとダレてますけど、テレビの今という視点では良書です。