国会で電力自由化に関する法律が可決されたというニュースが話題になってます。そんな時期に読むにはおすすめの本を紹介します。3.11以降の電力に関する議論は大きいです。経済の発展のために原発の推進を掲げる経済界。そして、反原発を旗印にデモを行う人。昨今の電力議論を見ると、「経済のために原発は即時再稼働するべきだ」という意見。そして、「ドイツのように自然エネルギーの普及を進めろ」という意見。色々な根拠として、原発推進は「自然エネルギーは発電コストが高い」といい、反原発派は「訴訟費用も加味すると原発のコストは安くない」と主張する。というのがおおまか電気を巡るやりとりです。

でも、本書の凄いのは、たぶん、電力の未来を描いた初めての本なのではないか?という点です。強い口調ではないものの、将来の電気に関して考えさせられる良書です。個人的には結構衝撃的な内容でした。

●家庭が払う電気代が決まる過程。

皆さんが支払っている電気料金。一部の大口を覗けば、殆どの人は電力会社(東電とか関電)からの言い値で決まっています。この電気料金の決め方がどうなっているかご存知でしょうか?例えば、1年を30分単位で見た場合、最大の電力を使った2倍の価格が電気料金として徴収されます。不足の事態が起きないようにです。2世帯があったとして、100kW使っている家庭が2世帯あったとして、総契約数は200kWアワーですが、電力の量は100kWしかありません。で、通常の家庭は1kWあたり1500円の基本料金がかかります。それを分解すると、「電気料金」と「託送料金」の2種類になります。電気料金が1000円で託送料金が500円です。合計200kW契しているわけですが、実際の総量は100kW。つまり、100kW分の電気はムダだという事になってます。東電の6400万kWのうち、余剰の料金だけで東電の1年分の利益になります。つまり、東電は不等率によって電気料金を荒稼ぎしていたわけです。

●「30分3%同時同量」自然エネルギーは予測できる。

自然エネルギーが爆発的に普及しない背景にはこういったルールがあります。例えば、大手電力会社は1日を30分単位で見た場合、その間の電力の供給を3%以内の変動に抑える事を求めます。これが自然エネルギーが不安定で送電網に大量に流せない理由。これは著者が運営する会社の話ですが、自然エネルギー例えば太陽光てあったとしても、天気の予測やビックデータを活用すれば誤差数%以内で予想する事が可能だそうです。

●全ての電気機器はITに繋がる。

本書が面白いのはここですね。ただ単に「原発再開」や「反原発」ではなく、電気の未来について綴っている事です。技術的に全ての家電や電気機器にIPアドレスを与えて、コンピューター上で管理する。「使い切るまで2万円の電球」「10年保証で電気代込のエアコン」。車が自動化される時代が到来しつつあるように、ライフスタイルは大きく変化していく。電気だけではなく記憶さえも記録していく時代。電気がただ流れるだけではなく、電気によってライフスタイルが変化していく様子が綴られてます。

この本なんで売れてないんだろう?もっと評価されてもいいのに、、。