新聞がヤバい、それは日本でも散々喧伝されていた事。例えば、 佐々木俊尚さんが「2011年新聞・テレビ消滅」の中で2009年の段階で国内における新聞の栄枯盛衰を綴っているけれど、アメリカはもっとすごい、というのが本書の内容です。冒頭で名門NYタイムズ(知識階層が読む世界的な新聞)が経営危機に陥っている事を記述します。その中では、2009年末までの3年間で社員の3分の1近い1400人を削減したという衝撃的な事実がある。これは長期的な現象ではなく、もっと短期的な事。たった数年で変わってしまった。NYタイムズが建設した自社ビルを手放すというニュースが物語っている。竣工からたった数年の出来事、、。

●広告費の激減。

日本の新聞と違って、アメリカの新聞はその収入の多くを広告収入に依存しているわけですが、その広告が激減した。それはリーマンショックであったり、ネット広告への移行(アメリカでは新聞の中に車の売買や不要品の買い取りを依頼する広告=クラシファイド広告が盛んで、新聞の多くの収入源になっていた。それがネットに流れているという説)だったりするわけですが、それはNYタイムズに限らず全米における全ての新聞において、、。最近でも米国のトリビューン紙が破綻した事は日本でもニュースになりました。

●ニュースは必要なのか?

で、本書の面白い点は新聞会社(あえて言うと)だけじゃなく、ニュースそのものの存在意義が問われているのです。それは新聞が必要か不必要か。という事ではなく、ニュースそのものの話。アメリカには報道の分野におけるピューリッツア賞というものがありますが、NYタイムズはそこで賞を受賞していた。別に中身が劣って衰退したわけではないです。最近では日本でもそうですが、YahooニュースやGoogleニュースの見出しだけを読んで終わり、という人も少なくない。とすると、ニュースそのものを国民は望んでいるのか?という疑問を抱く。第4の権力と言われてますが、言い方を変えれば、別にニュースがなくても生きて行けるし、調査報道も必要ない、そんなものは読まない。という衝撃的な事実があるわけです。

●新聞のNPO化。

若者は新聞を読まないという耳タコ的な議論もあるわけですが、
10年以上の試行錯誤の末に未だに収益化難しいわけで、本書にも書いてあるように、ニュース取材そのものがNPO化(ボランティア的な?)される危険性もある。本書で明確な復活案が綴られているわけではありませんが、意外とネットで忙しいからニュースは読まないという本音が読者の間にはあるのかもしれません。