確実に今年のベストすご本です。副題にある「Kindle開発者が語る読書の未来」と書かれていたので、「あ〜またリアル本を読んでいる奴なんてダサい」的な事を語るのかと思ってました。ただ、本書は本当の意味で読書の未来を語ります。冒頭では、Kindle開発の裏話なんてのが綴られているわけですけど、心を奪われたのは後半部分です。まず簡単に本書で綴られてる衝撃的な未来予想は箇条書きにすると、以下のようになります。
・2016年頃には、電子書籍が消費全体の半数に普及する。
・それぞれの本に専用辞書や秘書機能が組み込まれる。
・いずれ電子書籍の中古販売が実現する。
・電書は読者や作家が集まるチャットルームになる。
・「本を所有する」という概念自体が無くなる。
・読書は「娯楽を体験する」形に変わって行く。
・脳に直接訴えかけるような読書形態が生まれる。
・ハイパーリンクで世界のすべての本がつながる。
・「読書版フェイスブック」が生まれる。
・映画や音楽も「1冊の本」の一部となる。
・これからの作家にはデータ分析能力が求められる。
電子書籍の中古販売は結構衝撃的でした。ただ、ボクは電子書籍には懐疑的なんですよね。勿論、AmazonのKindleペーパーホワイトも発売日に買いましたけど、殆ど使ってないです。やっぱり電子書籍は紙の弱点を克服したっていう前提ではなく、出版社や書店から利益をぶんどりたいという、Amazonや楽天の企みで生まれているわけです。本書でも綴られてますけど、電子書籍の強みは流行本とベストセラーなんですね。あくまで、検索でヒットする本にしか出会えない。例えば、東京のジュンク堂のように、何十万冊という蔵書があって、本棚を眺めて「あっこれ面白いかも」と思って買うのとは違うし、偶然も生まれない。
本書ではさらに、将来的にKindleは定額サービスになるのではないか?という話もあるけど、ボクが思うに「ベストセラーはKindle」で読んで、それ以外の本は「書店で買う」という構図が良いのかな?と思います。電子書籍で新人作家が生まれるというシステムも2010年初期に言われてましたけど、未だに誰一人として成功してないですからね。
そもそもスマホの普及によって、読書の習慣そのものが廃れているという現実があるわけです。
で、本書が衝撃的だった理由は、そこではなく本そのものに対する考え方です。
少し引用してみます。
読書はいまこそ、人間の想像力を駆り立てる本来の姿に立ち返るべきだと私は思う。映画やビデオゲームは収益性や特殊効果の面では本より優れているが、世界に入り込める度合いに関しては、本に勝るものはない。本は読者をその世界の中に誘う。「読む」という行為は、世界の中に身を浸すことだと言ってもいい。一方の映画やビデオゲームは、「見ていないとき」にしか「読む」ことはできない。その点ではリアル本も電子書籍も変わりない。
(中略)
本を「読む」には、ほかのメディアを「読む」場合よりも能動的に想像力を働かせなければならない。本は想像力を働かせる必要があるため、読めば読むほど病みつきになる魅力がある。本のそんな想像力にとりつかれてしまうと、刺激を与えるだけのほかのエンターテイメントでは満足できなくなる。想像力を駆り立ててくれる度合いがまったく違うためだ。
(中略)
意識を集中して想像力を働かせる。エネルギーを要するが、それが「読む」という行為だ。読書の未来はここに立ち返ることができるかどうかにかかっていると私は思う。
ただ、電子だから想像力が駆り立てられるのか?というと答えは違う。
本の未来は明るいようで暗い。暗いようで明るいのかもしれない。