イーモバイル。今やSoftBankに買収されてYモバイルという名前に変わってしまったけれど、通信業界において、ドコモ・au・ボーダフォン(現ソフバンクモバイル)に対抗する通信会社として誕生しました。その創業者である千本倖生の半生と経営の極意を綴ったものが本書です。DDI(今のちびっ子は知らないと思うけど、KDDIの元祖みたいな存在)を稲盛氏とともに創業した。今では殆どの人は知らないけれど、固定回線というのはNTTの独占だったわけです。著者自身、電電公社の社員だったわけで、電話料金は今の何十倍という値段が掛かるものだった。それを打破するめたに、立ち上げたDDIその項目はとても面白いのです。アンテナの基地局を作るわけですが、山の上に建設すると、地権の関係でどうしても複数の地主をまたいでしまう。そんな時は千本さん自ら一升瓶を持って、お願いに行ったというエピソードは興味深いです。

「一円の節約は、一円の利益を生む」

という言葉はかなり刺激的でした。

本書から強く学べる事は、熱意を持って行動すれば人は動いてくれるという事です。千本さん自身、お金持ちではないですし、ゴールドマンサックスやカーライルなどからお金を引き出した手腕というのは凄いです。それは本書ではそらっと「カーライルから○○億円」と書かれているだけで、たぶんそこには文章では綴れない熱意があったのだと思います。今や携帯電話は大手3社の寡占なわけで、そういう意味でイーモバイルが買収された事は少し複雑ですよね。ただ、本書ではベンチャースピリットに関する様々な事が綴られています。巨大企業に挑むベンチャー、その奮闘劇はやはり読んでいて面白かったです。