まぁ史実は様々で憶測にしか過ぎないけれど、ある意味でディズニー的な映画だと思った。本作は名作小説「メリーポピンズ」をウォルトディズニーが映画化するのでの物語です。作者であり、本作の主役?であるトラヴァースの過去と現在を行き来しながら映画完成までの経緯を辿る。で、本作の冒頭でこのトラヴァースっていう人が、もの凄く嫌なおばちゃんなんですよね。ミッキーなんてゆるせない、ディズニーランドなんて論外という人で、ホテルの部屋にあるでディズニーのぬいぐるみさえも隠してしまう。何故、この人がディズニーの映画化の交渉に入ったのか?というと、本作によれば「お金」が無かったから。という事だそうです。ウォルト自身が原作に惚れ込んで熱烈なオファーをしたらしいですが、この完成までの経緯が凄いです。
「ここで歌が入ります」
↓
「ゆるせない」
「実はペンギンのアニメが入るんですよ」
↓
「私はイギリスに帰ります。」
といった具合で制作は全然進まなさい。
トム・ハンクス ウォルト・ディズニー・ジャパン株式会社 2014-08-06
●トラヴァースの過去。
それと平行して、作者であるトラヴァースの過去が回想されるシーンが続きます。アル中の父親そして、壮絶な死。それが彼女を悩ませていた。ある意味で映画「マーガレットサッチャー」的な作品ですが、次第に明らかになる過去。それでも説得を続けるディズニーや製作陣に対して、次第に心を開かせていく。最初は嫌だったディズニーが次第に好きになる。しかし、作品中のペンギンのアニメが入る事に激怒として、イギリスに帰ってしまうわけです。それと同時に、トラヴァースの過去を知ったディズニー(ここはネタバレなんで伏せておきます)は、彼女に会いに行くために次の飛行機でイギリスへ。そして、優しい言葉で語りかける。これが決めてとなり、「メリーポピンズ」は完成し、100億円を越える大ヒットになるわけです。ハッピーエンドばんざい!でもこれってもの凄く夢の王国ディズニー的なんですよね。冒頭で言ったように、元々はお金が欲しかったけで、ディズニーに魅了されてばんばんざい。これってどう?って事です。最後があれですよ?こんなん作り話だろ、って言われたらそれまでですよ。
●ディズニーとお金。
トムハンクスはディズニーそっくりで、はまり役ですが、ボクが思った事は似ているとか似てないではなく、ウォルト自身がこの作品をどう思ってたのか?その点があまり語られていない事です。一つの選択しとして、ビジネスマンとしてのウォルト。そして、個人としてのウォルトがいるわけです。「この作品を是非とも多くの人に知って欲しい」と思うウォルトと、原作を読んで「これは絶対稼げるぞ」と思ったウォルトの含みもあるわけです。その部分が描かれてないから、ある意味でウォルトという人がドライに見えてしまう。それはある意味でディズニーの本性なわけですが、これが意図なら凄いけども、もっとウォルトの感情を込めないと、変に見えてしまう。
●メリーポピンズは知ってて当然?
もう一つ言えば、本作では「メリーポピンズ」という作品は登場するものの、「そんなの知ってて当然」という感じがあります。たぶん、まったく知らない人が見れば「メリーポピンズって何なの?」っていう事で最後まで終わります。ただ、映画としての完成度は高いんですよね。トム・ハンクスそっくりですし、映画としても悪くない。健全な映画としては面白かったです。