J:comと言えば、日本を代表するケーブルテレビ事業者です。もしかすると、読者の中には「うちはケーブルに加入しています。」という方もいるかもしれません。前もって言っておくと、ボクは別にJ:comを批判するつもりは毛頭ありません。ただ、この本は不満です。新品で1500円出した事をめっちゃ後悔してます。どうなってる角川!帯に「日本最大のケーブルネットワークはこうして誕生した。その道のりと経営論」と書いてありますが、ほぼ嘘です。まず本書の半分が著者の自伝的な内容になってます。娘が海外の大学に行ったとか、ニューヨークに派遣されたとか、日本に戻されてとかですね。でもはっきり言って、そんなのどうでもいい。ボクが知りたいのは、ケーブルテレビがどう構築されて、地上波とどう戦ってきたのか?という話です。

一番残念だった点は、J:comがKDDIとの関係について。
こう書かれてます。
いろいろな経緯があって、リバティ・グローバルは、2011年冒頭に、J:comの出資全株式をKDDIに売却し日本から撤退を決めた。一時はマイクロソフトも株主になっていたJ:comだが、リバティ・グローバルの撤退で海外の機関投資家は離れていった。J:comはその後、間もなくKDDIと住商連合に株式全額ほ買い取られ、非上場に戻った。
ちょちょちょちょっですよっ!そんだけですか?

ニュースでも散々取り上げられましたし、KDDIのTOBで揉めていたじゃないですか?その裏側について綴らない。本書を読むと、どうしてもケーブルテレビが順風満帆に成長してきたように思ってしまう。ここで関係者からのコメントを入れたり、幹部や社員のコメントが入って然るべきではないか。はっきり言ってしまえば、J:comがどんな企業であるかすら本書を読むだけでは理解する事はできません。スカパーの衛星放送とケーブルテレビの比較。ケーブルテレビの今後、そして放送の未来。放送のあり方。通信との放送の融合。そして、ケーブルテレビが行き着く未来。GoogleやAmazon、そしてエイベックスのdビデオなど群雄割拠の中での争い。ある意味でこの本だけを読むと、ケーブルテレビはこのままで良い、変わる必要などない、と捉えられてしまう。アメリカの例で言えば、かつてはケーブルテレビが謳歌していた時代もあるけれど、今ではネットフリックスなどの定額配信サービスによってその地位は揺らぎつつあるわけです。

会社を離れたからこそ、語れる事もあるでしょう。
あえて古巣を批判する事もできたでしょう。

それについては殆ど綴られてないわけです。
その上で経営哲学まで語る事には無理があると思います。