帯の「ソフトバンク 0.006% 純利益788億円→納税額500万円」「ユニクロ 6.92% 純利益756億円→納税額52億円」。という言葉を見て手に取りました。今では税金の話題はアベノミクスの成長戦略の一つである法人税減税です。日本の税金は世界一高い。ニュースやメディアでよく聞く言葉です。確かに、実行税率は40%近くシンガポールや韓国なとど比べると、税率は高い。これが日本企業の競争力を削いでいるというのが、経済界の声なわけです。でも実は、日本の大企業は巧みな節税術を駆使して、裏技的な節税を行っているわけです。それが帯のソフトバンク 0.0006%という驚愕の数字です。

●税金はどう決まるのか?

簡単に税金の話をすると、法人税は以下のように決まります。

益金−損金=所得
所得×税率=税額


当然ながら所得が多いほど税負担は大きくなります。100万円の利益よりも100億円の利益の方が税負担は大きい当然ですね。

日本のタックスヘイブン

日本の大企業の法人税は簡単に説明すれば、「タックス・イロージョン(課税の浸食化)」や「タックス・シェルター(課税の隠れ場)」によって縮小され、実際の納税額は大きく軽減されています。タックス・イロージョンとは、課税ベースを減らすために行われる益金の減額と損金の増額で、タックス・シェルターとは、節税目的の金融商品や、取引テクニックによる利益の付け替えや飛ばし、損失の捏造などを利用する税逃れです。

●配当という最高の節税テクニック。

節税の一つのテクニックとして、配当という方法があります。簡単に説明すれば、Aという会社本体が赤字であったとしても、Bという会社に出資し、Bという会社が利益を出す。その上でA社に対して出した配当は法人税とは無関係という事になっています。受け取る会社や子会社などであれば法人税を0にする事ができる。例えば、東芝は税引き前純利益はマイナス1005億円でしたが、受け取り配当金は、その赤字額の670%にのぼる6737億円だったそうです。野村ホールディングスも同様に、マイナス3150億円の赤字だったものの、受け取り配当は、その赤字の169%である5331億円だったそうです。

●ユニクロは偽善か?

ユニクロの柳井社長は法事税に関してこんな発言をしています。
企業の競争力をそぐような議論さえある。日本では法人税の実効税率は40%になる。ドイツ、イギリス、中国や韓国は20%台。これでは競争できるはずがない。ただでさえ高い日本の税率をさらに上げようという意見さえある。企業に「日本から出て行け」といっているのと同じだ。
その一方でユニクロは、2013年3月期では、税引前純利益は756億円だったものの、払った税金は52億円。たった6.92%しか払ってない、日本ではソフトバンクの孫さんと並ぶ大富豪なわけですが、本意はどこに?

●個人のお金持ちにも優しい日本。

詳しい大企業の節税方法に関しては本書に譲るとして、実は富裕層も税金という点は利益を得ている。日本は累進課税方式で所得が多いほど課税金額が多いと思っている。しかし、ある金額を境に、所得税はむしろ下がるというデータがあるわけです。100億円になると13.5%。年収1000万円台とほぼ変わらない税金しか払ってないわけです。

●2つの疑問。

本書を読んで2つ疑問に思った事は、これだけ節税テクニックがあるのに何故、経団連や大企業は法人税の減税を主張するのか?そして、富裕層がこれだけ安い税率にも関わらずシンガポールに移住するのか?という点です。最後に本書では消費税増税は財政を悪化させると綴っていますが、それは珠玉全うな発言です。