僕は都内某大学に通う大学生だ。2013年12月27日。テレビ番組を観ていた僕は、こんなニュースを目の当たりにした。ある意味で衝撃的であり、ある意味で刺激的な内容だった。



任天堂、テレビ東京株の議決権ベースで31.2%を獲得。



僕の脳裏にはある記憶が蘇った。そう、ニッポン放送を買収しフジテレビを乗っ取ろうとしたホリエモンの事件だ。その後の顛末はニュース通り。ホリエモンもテレビ局に手を出さなければ粉飾決算での逮捕は免れたのかもしれない。そして、もう一つの記憶が楽天によるTBS買収だ。楽天グループが東京放送(現・東京放送ホールディングス)の全発行済み株式の15.46%を取得した事件だ。会見上で三木谷社長が言った「なぜ、買っちゃいけないんですか」という言葉が思い出される。そんな事が、記憶に新しいと思う。テレビ局の絶大な広告効果。そして、ネットとテレビの融合。古くはソフトバンクの孫社長がメディア王ルパート・マードック氏と共同でテレビ朝日の買収を仕掛けた事が思いだされる。ネット企業、いゃ全企業にとってテレビ局とは魅力的な存在なのだ。



記者会見の場で、任天堂の社長が会見する様子をYouTubeで見た。



「我々はテレビ番組とニンテンドーDS、ひいてはWiiに代表される機器とのシナジーを期待しています。」



あまりぱっとしない会見だった印象だ。簡単に説明すれば、「ニンテンドーDSでテレビ番組が買えますよ」という事だろうか。AppleがiTunesで音楽業界を激変させたように、テレビ業界に革命を起こすのは我々だ…と言わんばかりだ。敵対的買収の発表から数時間が経って、ネット上に様々な意見が寄せられていた。某大手ニュースサイトである「ネタフラナイさん」で大まかな情報を手に入れた。



・任天堂がテレビ東京を買収をして得られるものとは?

・任天堂のIRから分析するテレビ東京買収

・テレビ東京がニンテンドーテレビに変わる?



痛くないニュースさんでも早速取り上げられていた。そこには、こんなコメントが寄せられてた。



「げっ、マジかよ!任天堂すげぇーー。」

「3Dのテレビ番組が流れるのか?」

「金があるからって何をしていいわけじゃないぞ!」

「ニンテンドーテレビ誕生か?」



確かに、任天堂は現金8000億円を保有する優良企業だ。時価総額が数百億円のテレビ東京を買収したところでまだ余裕は十分にある。アメリカのディズニーの営業利益の7割を傘下で放送局のABCが稼ぐように、テレビは場合によって最高の投資と言えるだろう。



時総額2兆円 VS 時価総額300億円。



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ご存知の方もいるかもれないが、テレビ東京は他の民放と比べるとネット局が6つしかない。全国ネットではないのだ。それを差し引いても魅力のある会社。それは、テレビ東京が抱えるアニメのコンテンツだろう。「ポケモン」「イナズマイレブン」「ナルト」「フェアリーテイル」。ゲームが主力商品である任天堂にとってはコンテンツとのシナジー効果が生まれる。ポケモンの番組にポケモンの宣伝を流す。主力商品であるニンテンドー3DSを宣伝するには絶好の番組だ。



敵対的買収から数日、任天堂はさらに発表を行った。



テレビ東京株の50%超の獲得を目指します。



テレビ東京が日経新聞の支配。お年寄り向け番組からの決別を示しているように、僕には思えた。あれから数ヶ月が経って、テレビ東京は任天堂の子会社になった。気になるテレビ局の名前は据え置き。そして、気になる番組編成が発表された。それには、僕も驚かされた。



・おはニンテンドー

・ニンテンドーネ!

・レディスニンテンドー

・ピラメキーニンテンドー

・開運なんでもニンテンドー

・いい旅ニンテンドー

・モヤモヤニンテンドー



任天堂の本気度を感じさせた。勿論、賛否両論の意見が飛んだ。それまで、テレビ東京の大スポンサーと言えば、お茶漬けでお馴染み「永谷園」だった。しかし、新生テレビ東京で流れるCMの殆どが任天堂商品の広告宣伝に使用されていた。あっ、忘れていましたがファンの熱い要望を受けて「ニンテンドークラブ」の放送も決定しました。



任天堂がさらに打ち出したのがネットとテレビの融合だった。

手初めに、テレビ東京で放送したアニメ番組を「ニンテンドーDS」で観られる「ニンテンドーTV」を開局。Wii、新型機Wii Uでも同様のサービスを実施した。ネット局の少なさをカバーするため、衛星放送である「BS JAPAN」において、テレビ東京で放送した全番組の再放送を実施した。万年最下位だったテレビ東京の視聴率は、業界3位を達成。今後にも期待が高まる。最後に、任天堂のイワタ社長にこんな質問をした。



「テレビ東京で一番好きな番組は?」



「ASAYANです。」



僕はこのひと言にテレビ東京の未来を感じた。

がんばれ、テレビ東京!!
(※このお話はフィクションです。)