この本すげぇIT関係の本は数多く出版されていますが、間違いなくベスト3に入る本です。特に、終盤の章における「ハイコンテクスト」「ローコンテクスト」という部分が凄いです。もし買わないにしても、そこだけ読んでも十分すぎるほど価値がある。「そういう事だったのかっっっっっ!」という衝撃が走りました。是非、手にとって全てを読んで欲しいです。



●課金ビジネスが成功しなかった理由。



最近は、「パズドラ」のブームがあって一昔前の「ドリランド」のように、「課金しなはければ強くなれない」といったゲームでなく、無料でも十分に遊べるけど、もっと強くなりたいなら課金した方がいい。(例えば、パズドラで言うコンティニューやガチャがひける1個何十円かの魔法石)とかですね。でも基本的に日本において、課金ビジネスというのは成功していないそうです。まず、クレジットカードを出してカード番号や有効期限を入力するのが面倒といったハードルがあります。



最近の支流として、クリスアンダーソン氏が著書「FREE」の中で提唱している「フリーミアム」(フリーとプレミアムを掛け合わせた造語)が挙げられます。例えば、エバーノートで言う普通に使う分には無料だけど、容量の大きいファイルを保存したならお金を払ってね。といったものです。



で、本書で興味深かった点は時間や手間という概念で課金を綴っている点です。
ユーザーがお金を払うかどうかは、情報の対価だけではなくて、その情報を調べる時間や支払いにかかる時間、手間、そういったトータルのコストに見合うかどうかで決まります。情報そのもののコスト、その情報を探すための捜索コスト、情報を手に入れるために必要なコスト。この3つを合わせたものが、価格に見合うかどうかです。
例えば、音楽ファイルを手に入れる場合、Winnyで30分や1時間かければ無料で手に入ります。しかし、時給800円で7.5分で音楽ファイルが手に入るのであれば、それは」無料で手に入れた方がお得ですが、それ以上の時間が掛かるのであれば、100円だしてiTunesから買った方がお得なわけです。面白い話として、100円ライター理論といったものがあります。これは、どんなに高価がライターを持っていても、それを忘れた場合、100円のライターがコンビニで買えるのであれば、そこで買ってしまうというものです。



●ハイコンテクストなインターネット。



ここが一番面白かったです。ここだけでも1400円出す価値は十分にあります。昨今、商品は値下や効率化の並に晒されています。いかに物流や商品を効率化して、価格を下げるのか?例えば、本書では1個十円で買えるAmazonのたまごと、1個70円する楽天で買える水郷どりの比較が面白いです。価格的に言えば、圧倒的にAmazonに軍配があがりますが、両者には明確な違いがあります。これが著者がGoogleから楽天に転職した理由だそうです。



Amazonが売っているのは10円のたまごだけど、楽天が売っているのは70円のたまごという物語だと。簡単に言えば、Amazonは統一化されたサイトの中で価格で勝負してくる。対して楽天では店舗主がそれぞれのサイトで物語を提供している。70円のたまご+その物語を売っているのだと。



それはミヒャエル・エンデの名著「モモ」に登場する時間貯蓄銀行のようなもので、どんどん効率化して時間を節約すると次第にギクシャクした世界が待っている。ローコンテクストなアメリカでインターネットが生まれた事は不幸だったと綴っています。アメリカでは他民族、他宗教であるが故に、ローコンテクストつまり自分の背景を含めて詳細に語る必要がある。日本なら「あれいいよね」で伝わるものが、ローコンテクストな社会では通用しない。



今現在、インターネット第一のカーブと第二のカーブの間にいる。これからの時代にインターネットがより良くなるのか?は我々にかかっているとも言えます。