基本的に本書は孫正義という人物が好きなどうか、SoftBankが好きかどうがで賛否が分かれる本です。例えば、ある人によっては「殆どの内容がSoftBank幹部からの発言であって、よいしょする発言ばかりが紹介されている」とか「SoftBankの情報漏洩や負の部分が載っていない」という指摘もある。一応、感想は頷ける部分もあるけど、ボクは本書を違った点で見ました。それは、携帯キャリアを取り巻く環境です。iPhoneをドコモが発売した事で、3強全てがiPhoneを取り扱うようになりましたが、その間での経緯や情報がまとめられている。というのは刺激的で面白かったです。



やはりアップルの要望は強くて、「Androidよりも安価な月額プラン」「全販売台数に対する何割分のiPhoneを販売する」といったもの。広告コピーの一文に関しても殆ど変更はできない。



で、3社を比較してまず、はっきりしている事は、



電波や満足度においては殆ど変わらない。



という事です。



確かに、地方においてはドコモの優位性は疑う余地がありませんが、大都市圏であればSoftBankでもドコモでも大差はないという事です。地下鉄ならともかく、駅前で圏外なんて事は殆どありません。で、差別化できなくなった事で各社は何をするのか?というと、携帯外への参入です。SoftBankで言う「ガンホー」「スーパーセル」。ドコモでいう「らでぃっしゅぼーや」や「ABCスタジオ」など、携帯キャリアはLINEなどの無料通話アプリによって土管屋化する事を怖がっています。



そして、本書のもう一つの魅力が、SoftBankが買収したアメリカ携帯3位の「スプリント・ネクステル」の買収の経緯について克明に綴ってある点です。新聞では「買収した」ぐらいしか書かれてませんが、本書では買収の経緯から買収完了まで綴ってあります。スプリントと交わした契約であったり、実は本当の狙いであった「クリアワイア」についても綴ってあります。そうだったのか孫さんっ!というね。



孫さんは気性が激しいという一面を持ちどこか憎めない一面がある。



auの社長に対して、



「うちはそちら「KDDI」も買収できるんですよ。」という発言はすごい。



いつの間にか転職していた社員の例や即断即決。確かに、本書からもその凄さは伝わってきますが、アンチがいる一方で多くのファンもがいるのも事実です。創業当時ではなく、今のSoftBankという点では面白いです。ただ、基本的に「SoftBankはいかに凄いのか」という展開で話が進みます。その点は言っておきます。