クレしんが感動の押し売りの頃ではなかった作品です。笑って泣けるが最近のテーマなような気もしますが、原恵一監督作品として「笑」を重点に考えると、これは名作です。悪の親玉の動機がめっちゃくだらない。「ブタのヒズメ」はそれはそれで世界征服という明確な目的があったわけですが、本作のそれはの目的は「地球を温泉で沈めてしまう“地球温泉化計画」ですからね。ラストの方で明らかになる動機が凄いレベルです。



●あらすじ。



悪の組織「YUZAME」は地球を温泉で沈めてしまう地球温泉化計画を目論んでいた。正義の秘密組織「温泉Gメン」はYUZAMEを倒すために、金の魂の湯(略して金タマの湯)を探していたが、何とその温泉が野原家の地下にある事が分かった。半ば拉致される形で温泉Gメンの本部に連れてこられた野原一家。なかば強引にYUZAMEとの戦いに巻き込まれていくのだが、、。



●感想。



で、話を冒頭に戻すと、敵の動機はめっちゃくだらない。たぶん、40歳以上のおっさんじゃないと分からないネタが用意されています。おいおいっそれが動機かい?と、腹が痛くなるほど笑いました。まず日本の温泉を管理する「温泉Gメン」の存在がナンセンス極まりないです。そして、敵はお風呂が大嫌いという設定も凄い。何か凄い事が起こっているんだけど、その一つ一つがくだらないわけです。温泉Gメンのアジトに連れて来られて、何故か夫婦喧嘩に発展するひろしとみさえ。時折、見せるほんわかした入浴したシーン。本作で初めて披露された、しんのすけの「ケツだけ歩き」。「焼き肉が食べたかったら白状しろ」と迫る敵。健康ランドと題された拷問。このバランスが凄いですよね。最後は最後で何か感動的な作品に仕上がっている。日常では情けないひろしが映画では家族をひっぱっていく。=映画版でのジャイアン的な感じですが、その姿はかっこいい。映画では自分の家を守るために我が家へと帰っていくシーンとか、、。



YUZAMEのロボットが春日部に向かう場面。怪獣ゴジラのテーマが流れ、「特撮作品」のテイストを醸し出しつつ、絶対に勝てない巨大ロボットとの戦い。そして、金の魂の湯の魔法の効果によってスーパーマン?に変身する野原一家。野原一家ファイアーよろしく、最後までナンセンスさを貫く。あえて映画館のスクリーンで、というほどではないけれどDVD版なら十分すぎるほど楽しめる。特に、本編とは別に「クレしんパラダイス!メイド・イン・埼玉」という短編集が収録されているのですが、これが結構おもしろい。でた〜でた〜でた。は耳に残りますよ。



興行的に初めて10億円を切ったという事で世間的な評価はイマイチかもしれないけど、本作は他の作品に負けていないと思います。