過去2作「オトナ帝国の逆襲」と「アッパレ戦国」で感動路線の作品が続きましたが、本作は完全にギャグ路線に振り切ってますね。そもそも原恵一さんのこの2作品はクレしん映画としてのフォーマットとしてどうか?という議論もあるわけです。やはりそれ以降の作品は、どうしても「オトナ帝国と比べて」とか「アッパレ戦国と比較して」といった感じで減点方式で見られてしまう。その中でも本作は、まだ脚本・絵コンテの段階で原恵一さんが参加してますし、そういう意味でそれ以降のギャグ路線への転換期とも言えます。



●あらすじ。



あまりの朝食の貧しさに激怒するひろしやしんのすけ。その理由をみさえに問いただすと、スーパーで高級な焼き肉セットを購入したのだと言う。みさえはそのために節約していた。晩ご飯は焼き肉パーティーだ!と喜ぶ野原一家の元になぞの人物が現れる。敵に追われているというその人物。そして、さらに謎の男が現れるのだが、何故か野原一家は全国中に指名手配されてしまう。自分たちは関係ない、そう思いつつ逃げる野原一家であったが、この騒動を収めて晩ご飯の焼き肉を食べるために、本部のある熱海で向かうのであった。はたして、野原一家は焼き肉にありつく事ができるのか、、。



●感想。



うん、まずね「ヘンダーランド」とか「オトナ帝国」とか起承転結があって、ちゃんとした映画を観たい方の評価はイマイチかな?本作はギャグ路線に徹する事、その一方であまり世界観や起承転結は用意されていない。焼き肉っていう筋はあるけれど、まず敵が野原一家を指名手配した理由も方法も劇中では明確な回答はない。そもそも、敵は本部に野原一家を連れて行こうとしているわけだから、この逃避行はイマイチ理解できません。あえて、敵と戦いながら熱海を目指す事へのナンセンスさ、、。結局、最後はしんのすけがいい感じ(?)で物語を締めるわけですけど、それもあまり理解できない。例えば、日本中を1970年代にしようと画策したオトナ帝国と比較すると無理があります。



ただ、本作の魅力はそこではなく、やはりギャグなんですよね。所々に入る名作へのオマージュと音楽。夕飯に焼き肉を食べるための必至さ、ここに面白さがある。物語中盤、野原一家の面々が焼き肉を食べる自分を想像するシーンがあるわけですが、そこが強烈に面白いです。劇画タッチで描くわけですが、「おまえ、しんのすけじゃないだろ!」「おまえ、ひろしじゃないだろ!」といった感じでまるで別人になる。そして本作の凄い所は、冒頭で語られた何気ない言葉が最後の伏線として描かれているという点です。これは凄いです。結局、ヘンダーランドとかオトナ帝国のような世界観はないですが、笑えるしんちゃん映画、恐るべきスピードで展開されるギャグ。笑える作品を観たい方にはおすすめできる作品だと思います。



終盤でちょっと成長するしんちゃんにも注目です。ごめんね。カザマ君ってね、、。