まだ確定じゃないけど、2014年に読んだ中でも4番目か5番目に来る本です。ニコニコ動画のユーザーにとって川上さんはお馴染みの存在。YouTubeユーザーからすれば「えっ誰?」と思うかもしれませんが、最近のニュースで「角川」と合併して「KADOKAWA・DWANGO」になるという話もあったので知っている人も多いかもしれませんね。で、角川の角川歴彦さんが「彼は天才です。」と言っていますが、本書を読んで強く思った事は、本当の天才はここにいる。という事です。川上さんは間違いなく天才です。もう言っちゃうけどね、読んで。(笑)

本書は川上さんへのインタビュー記事を再編集した物になってます。ニコニコ動画の話やIT関係の話から、社会、そしてジブリまで幅広く語られています。


●ニコニコ動画は5年持てばよかった。

というのが最初の本音だそうです。他の項で、使い難いUIを作る事を目指していたと言っています。例えば、ニコニコ動画のユーザーなら知っているかもしれないけれど、無駄な空白を入れたり、本書でも語っているように、意図的に使い難いインターフェイスを作り出している。たぶん、ある種の遊びですね。ただ、一方でニコニコ動画において無計画に赤字を垂れ流していたわけではなく、かなり計画的に運用を開始していた話も載ってます。ジブリもそうですね。基本、「もっと寝たい」「もっとゲームをしたい」と語っている川上さんですけど、ジブリであったりエヴァのスタジオカラーであったり、本音では仕事を楽しんでいるんでしょうね。ジブリでプロデューサー見習いなんて、大変の極みみたいもんでしょ。

●オープンになるほど多様性は減って行く。

これは面白い発言でした。例として、小説の投稿サイトの人気上位が殆ど同じストーリーになるという見出しが付いていますが、クリエイターはぶっちゃけ増えない方がいいというのが本音だそうです。例えば、ジブリがあれだけ多様性をもったコンテンツを配信し続ける事ができる理由は、他に似たような会社が無いから。たぶん、他に似たような会社が数十社もあったら、「天空の城ラピュタ2」みたいな作品が溢れてしまうと語っています。

●ニコニコ宣言。

1.ニコニコは無機質的な集合地ではなく人間のような感情を備えた集合知を目指します。
2.ニコニコはすべてのものにコメントをつけられるサービスを目指します。
3.ニコニコはネット上に人間本位の仮想世界を構築することを目指します。
4.ニコニコはネットサービスをユーザーと双方向につくりあげる作品として提供します。
5.ニコニコはネットでのコンテンツと著作権の新しい可能性を追求します。
6.ニコニコはすべての表現者が自由にコンテンツを発表できる場を守ります。
7.ニコニコは仮想世界を現実世界へとつなげます。


ニコニコは世間的には一部のニッチな世界のものだけれども、ある意味でO2O。つまり、オンラインto
オフラインを目指すのでは?とも思ったりします。それは超会議であったりするわけだれど、ネット会社だからネットで完結するのではなく、それを実社会に反映させていく。それを本気で行っているのが、ニコニコ動画でありドワンゴであって川上さんなわけです。めんどくさい一方で、熱い人。それが本書を読んだうえでの川上さんに対する感想です。