Amazonで新刊情報をキャッチして発売日まで待ってました。今までも、サムスン電子やパナソニック、そしてソニー関連の本は出てましたが、ついに「シャープ」の本が出るとは。シャープと言えば、液晶の過大投資で業績が悪化し、株価が急落していました。世界の亀山で数年前まで過去最高の業績を叩き出していた企業はたった数年で衰退した理由。その理由の答え待ってました。

ネタバレですけど、本書はそれに解を出してます。読むと、「あ〜なるほどだからシャープはダメだったのか」と言う事が分かります。

●パーツは世界から調達すればいい。

中国にシャオミというスマホの販売を行う会社があります。たった4年で世界シェア3位に踊り出た企業。日本最強のスマホであるソニーの「Xperiaシリーズ」でさえ世界シェアで数%というのに、たった4年で世界シェア3位。この理由は何にあるのか?というと、パーツを自社で生産していない事にもあると思います。昔であれば、パーツは自社で開発するのが当たり前でしたが、今ではパーツそれぞれに専門の会社があって、そこで買えばいい。

例えば、シャオミのスマホは低価格ながらも液晶にはシャープ製のものを採用している。販売店に商品を卸さず、SNSや直販を経由して販売する。もう既に、安かろう悪かろうという時代は終わった。パーツは寄せ集め、製造はフォックスコンといった具合に、既に自社で完結する時代ではなくなった。

例えば、Appleにしてもそれは同じでiPhoneの製造の大半は中国で行われている。「カルフォルニアでデザインしてるけど、実は中国で製造してますよ」がAppleのスローガンですからね。(笑)

●シャープの液晶が不採算になった理由。

これは専門的になりますが、液晶パネルにおいては「○○世代」という呼び方をします。例えば、5世代であったり6世代であったり。それは何を示すのか?と言えば、つまり大きさですよね。世代が大きいほど1枚のガラス板が大きくて、一度に大量の液晶パネルを生産する事ができる。シャープが衰退した理由はまさにここです。簡単に言えば、投資を怠ったという事ですが、日本が得意とする擦り合わせ方式とは対照的に、後追い型の戦略を中国や台湾企業は得意としています。例えば、シャープが5世代のパネルを製造していると聞きつければ、それよりも次世代の6世代のパネルに積極的に投資する。これはサムスンなどが得意とする方法です。

技術開発にそれほど力を入れず、規格が完成した段階で一気に投資を行って世界を席巻する。

それと戦う事に無理があったわけです。

●堺工場の失敗。

これは本書では賛否があると書かれていますが、堺工場(ニュース等で失敗の代表例に挙げられた)ですね。これが過剰生産の原因とされていますすが、過剰生産以上に問題だったのは建設コストだと著者は言います。シャープのお膝元である大阪の近くに工場を建設したために、建設コストが余計にかかってしまった。そのために、価格競争で中国や台湾に負けてしまった。というのが大筋の意見のようです。

●シャープの隠し球。

シャープが生き残る最高の武器が「IGZO液晶」だと著者は言います。その上で通常の「擦り合わせ方式」ではなく「すり合わせ国際経営」を提唱しています。ただ一つ本書を読んで思った事は昔のように1つの製品が売れ続ける事はなくて、日本で成功したとしても、その成功モデルは中国や台湾、ひいては韓国に真似されてしまうわけで、世界規模で多額の投資を行う事は、つまり1つの選択肢を間違えるだけで、会社存亡の危機になるという事です。大手でしか物は作れない。中国は製品の質が悪い。というのは一昔前の話です。時代はより進化しているんだと本書を読んで強く思いました。