スタジオジブリにとって「宮崎駿」「高畑勲」両監督が関わらない初めての長編作品です。監督は「借りぐらしのアリエッティ」の米林宏昌さん。まず率直に言うと、「風立ちぬ」よりもボクはマーニーの方が名作だと思います。正直に言って、予想を完全に裏切られました、良い意味で、、。ボクは原作も読んでないですし、事前情報は殆ど入ないで見たので「あっこれは(耳をすませば)的な映画なんだな。マーニーと何か色々な事が起こるんだろう」と思っていたら全然違かった。

まず詳細を書く前にNHKのジブリ特集で宮崎駿監督が「思い出のマーニー」を製作しなかった理由を、こう語っていた事実を紹介しておきます。宮崎さん曰く、
マーニーはあまりにも内面的すぎるんですよ。
との事です。

たぶん映画を見ればその理由も理解できると思いますが、本作の魅力は派手なアクションでも盛り上がる場面でもなくアンナ微妙な表情と心情の変化。まずそれを映像と台詞から読み取れない人はマーニー=駄作だと言うでしょう。でもアンナの心情を理解する事ができれば、本作は本当に素晴らしいです。アンナの微妙な表情の変化を絵で見事に表現しています。

コングラッチュレイション米林監督です。

●あらすじ。

幼い頃に両親を亡くし、おばに引き取られた少女杏奈。両親の死の記憶を引きずり、内向的で殆ど感情を表に出さない子。学校でも家でも感情は表にはしない。そんな杏奈は喘息の発作をきっかけに、北海道の田舎の親戚も元へ行く事になった。自分なんて生きていてしょうがない。周りの人間は敵。そう思っていた杏奈。しかし、ある時湿地の向こうにお屋敷がある事を発見した。そして、それが妙に懐かしい気がした。そこで出会った金髪の女の子マーニー。マーニーとの出会いをきっかけに、杏奈は少しずつ変わり始める。

●感想。

最初は内向的だった杏奈。でもマーニーは違った。自分を愛してくれる。初めて人に愛されるという事を知った杏奈。そして2人は引き合って行く。ずっと一緒だよ、自分は誰にも愛されず存在する意味が無いのかもしれないと思っていた。しかし自分を愛してくれる人はいる。それを杏奈はマーニーを通して知って行く。派手なシーンも天空の城ラピュタで言う盛り上がるシーンもないけれど、実は自分はずっと守られ愛されていた。それはつまり、マーニーという少女に、、。最後に明かされる真実。それは自分の人生を変えた素晴らしい贈り物でもあった。マーニーは杏奈に対して、愛してくれる人はいると伝えてくれた。

杏奈はマーニーに守られていた。それはずっと昔から今でも、、。

興行的には勿論、宮崎駿監督の方が上だし演出面でも絶対に上。でもこれだけ人の内面を扱った作品を見事に映画化した米林監督は本当に素晴らしい監督です。ジブリはしばらく長編映画を作らないそうですが、宮崎駿監督イズムはちゃんと若手監督に受け継がれているんだと思って安心した面もありました。ただ、興行的に不発だったのは、やはり宮崎駿監督が言った冒頭の言葉「あまりにも内面的すぎる」という事に尽きると思います。映画館ではちょっと、、という人もDVDで見る分には十分に楽しめる作品だと思います。