6月のアップルの新製品発表会で去年に買収した「ビーツ」をベースとして定額音楽配信サービスを開始するのではないか?という話があります。日本では馴染みが薄いですが、世界的に見ると音楽は買うものではなく、定額で聴くものというのが主流になりつつあります。その筆頭がスウェーデン発の「スポティファイ」です。欧米を中心に60カ国でサービスを展開し、会員数は6000万人。月9.9ドル(1200円)の有料会員は1500万人を突破し、年間の売り上げは1000億円を越えるそうです。

2013年頃から日本上陸という話がありますが、レコード会社との交渉が難航しているそうで、2015年現時点でも日本でのサービスは開始されていません。今回の記事ではアップルは日本で定額配信サービスを行うのか?という事です。で、今回の結論としては「現時点での開始は曲数が限定的なのではない?」という事を書きます。例えば、海外の曲は多いけど日本曲は殆どないよね。という感じです。

そもそもアップルが定額音楽配信に踏み切る理由としては、世界的な定額制の普及によってiTunesストアでの楽曲の売り上げが急減している事です。噂によると、年間で10%〜20%ほどの落ち込みだそうです。

●日本で定額音楽配信が始まらない理由。

スポティファイやパンドラなどの定額音楽配信が普及している理由としては、欧米特有の事情があります。日本ではソニーやEMIといった大手以外にも、ミスチルのトイズファクトリーやB’zのビーイング、サザンのアミューズのように中規模のレーベルが沢山あります。アニソンで言うキングレコード。勿論、ジャニーズもそうです。でもアメリカでは寡占化が進んでいて、ソニーやワーナー、EMIといった大手だけで殆どの楽曲を扱う事ができるため、権利の獲得が容易だと言う理由が挙げられます。スポティファイが難航している理由も、これら全てのレーベルと個別に契約を結ぶ必要があるためだと考えられます。

●アップルは日本で定額音楽配信をするのか?

という話ですが、ここは推測で話を進めます。例えば、現時点で日本のスマホ普及率は5割。ケータイ1億台と考えて半分は5000万台。そのうちiPhoneの市場シェアは5割程度だと言われているので、2500万台。仮に10%の人がアップルが開始するであろう定額配信サービスに加入したします。噂によればアップルはスポティファイよりも定額でサービスを開始したい意向があるそうです。で、10%は250万なので、仮に値段を月額1000円だと仮定すると、1000円×250万で25億円。年間で300億円ほどです。音楽販売全体の市場規模は3000億円程度なので、定額配信を展開すれば10%ほどの市場シェアになります。

でもこれは諸刃の剣であって、iTunesストアにおけるおける利益を度外視するわけです。さらには、300億円から権利者ですね。作詞家、作曲家に対する印税が発生するわけで、実際現時点でのiTunesストアの売り上げ不明ですが、国内で定額配信を行ってもそれほど利益は出ないのではないか?という事が言えます。

アーティスト側からすれば、一番はCDの売り上げ、二番目が配信での売り上げ、三番目が定額配信での売り上げになるわけで、世界的に稀なほどCDが売れている日本であえて定額で配信する必要があるの分かりません。そもそもジャニーズのように配信そのものを敬遠している会社も多いわけですからね。

やはり、サービスが開始されたしても、国内の楽曲は限定的と見るのが正しいと思います。
もし仮にiTunesが提供する国内全ての楽曲が定額で配信されたら本当に革命ですよね。

●アップルはスポティファイを簡単に潰せる。アップル=iPhoneを売る会社。

ここからは余談ですが、アップルが本気になればスポティファイを潰す事は簡単です。理由単純で、スポティファイの原価以下でサービスを提供すればいい。アップルはiTunesも展開してますが、利益の大半をハードで稼いでます。アップルはソフトの会社でなくハードの会社です。App StoreもiTunesもiPhoneを売るためのおまけであって、別に利益が出なくても構わない。という事はiPhoneを売るために、利益度外視で定額サービスを展開する可能性はあると思います。

●余談2.そもそも6月に日本でサービスを展開するなら情報が漏れている。

アップルの定額配信サービスが日本で始まらない理由として、そもそも6月に開始するのに交渉の情報が漏れてない事です。これだけ中小のレーベルが存在するのに、どこからも情報が漏れてない事を考えると、交渉が難航しているか、そもそも交渉が行われていないのか?という事になると思います。

まず洋楽を中心に、徐々に邦楽も増やすというのが無難な結論だと思います。