DeNAの南場さんが書いた「不格好経営」は本としては名著でした。めずらしくボクは2回読んでますが、超名門のマッキンゼーを退社してからオークションサイトの立ち上げ、そして携帯シフトまで決して天才的な才能があったわけでなく、努力と根性で乗り越えて来た。その辺に共感性があるわけです。本書はそんなDeNAで会長を勤める著者が「不格好経営」の舞台裏と題して、横浜ベイスターズ買収までの経緯などを綴ってあるわけです。

で、正直に感想を言うと「つまらない」という事です。何故、つまらないのか?と言えば、そもそもの構成ですよね。著者としては野球参入の話を書きたいという熱意が伝わってくるわけですが、はっきり言って世間的に野球にそれほど熱は無い。確かに、企業として球団を持つ事は大きな目標かもしれないけど、そんなの20世紀の経営であって自己満足ですよね。

確かに、ジャイアンツ戦が視聴率20%だった90年代後半まで良かったかもしれないけど、今やテレビ放送は殆どなくて、たぶんちびっ子の中には生まれてから一度も野球中継を見た事が無い子もいるかもしれない。はっきり言って、本書は著者が書きたい事を書いた。というだけです。

ボクらが本当に知りたい事は、「COMM」ってなんで失敗したの?とかソーシャルゲームの今後とか。パズドラやモンストが普及する中でプラットフォームとしてのモバゲーはどう動くべきか?といった展開ですよね。はっきり言ってそういった展望は殆どないです。ゲームを通して社会を変えるとか、モバイルを通して世の中を変えるとか、そういった壮大な目標を語ってもいいのではないか?結局、ボクが本書から見たDeNAは本当に大企業そのものですよね。とりあえず現状維持で野球球団を持つ事で知名度を上げて、ゲーム事業を拡大する。そこに何の面白みがあるのか?という事です。

もっと過激に言えば、グリーの悪口くらい書いてほしかったです。

この本からソーシャルゲームの未来は見えなかったです。その点が非常に残念ですね。