「成城石井」というスーパーをご存知だろうか?何となく高級なスーパーらしい、、という事を知っている人は多くてもイオンやヨーカー堂のようにメジャーではない。成城と名前が付くだけに発祥は高級住宅街である成城なわけですが、本書の冒頭にも書かれているように、入ってみるとまず驚くわけです。高級スーパーだけど、内装がもの凄く豪華なわけではない。一見すると普通のスーパーのように見える。

確かに、地元の激安スーパーのように安さを売っているわけではない。では何故、成城石井は人々を虜にするのか?それが本書で貫かれたテーマです。

●ライバル店は存在しない。

子供が成城石井の肉しか食べてくれない。という貧乏人に対する皮肉はさて置いておいて、本書が面白かった部分は、成城石井が貫いてる姿勢ですよね。高級スーパーではないけれど、品物には非常に拘っているわけです。肉も多少は高いけれど、厳選した肉。置いてある全てのものに拘りがあるわけです。本書に載っている社長の言葉によれば、「成城石井にライバル店は存在しない」という事だそうです。他店が価格で勝負しょうが高級路線のスーパーを展開しようが関係ない。事実、成城石井が出店している場所には地下にスーパーがあったり、オフィスビルの中にあったりする店鋪もある。店鋪を出店する決めてはフィーリングだという。決して、マーケティングで物事は決めない。事実、成城石井にはマーケティングという言葉が存在しない。

●あなたが売っているものを子供に食べさせられますか?

これも成城石井が貫く姿勢ですよね。売り上げを短期間に伸ばすためには、見栄えをよくすればいい。例えば、ちらし寿司にしても、鮮やかなピンクの方がいい。でも成城石井ではあえて見栄えが悪くなっても合成着色料や保存料は避ける。自分たちが子供に安心して食べさせられるものしかおかないわけです。

●自前で総菜を作る。

これも姿勢の問題ですが、成城石井の総菜などは全て自社工場で製造されています。元々は他社に頼む事も検討していたそうですが、当時の成城石井では小ロットしか頼めず、食品会社からNOが出たわけです。ただ、それが今になって自社で安心安全な物を作るという結果を生んでいるそうです。

●お金が全てじゃないという教訓。

成城石井と言えば、記憶にあるかもしれない牛角を運営するレックスフォールディングスの買収があります。(牛角は現在、外資系ファンドに買収されたという話も聞きますが、、)買収直後、「店鋪数を100店鋪に拡大」というニュースが報道された時に社内は動揺したそうです。利益的な事を考えれば、勿論、店鋪が多い方が良いわけですが、それは成城石井の目指す方向ではなかった。ある意味で株主が利益の追求を求める、それに反対する経営者みたいな構図ですが、、。

結局、大切なものはお金ではないし、別にお金でお金を生んでいるわけではない。会社の事業を利益としか見れない事に対する良い教訓だと思います。そういう会社は無理がたたって割とすぐに潰れます。

安くしない。それは別に高く売って利益を得るためではなく、拘った結果として価格が高いだけです。という事は買い手にとっては非常に魅力的なお店だと思います。