簡単に要約すれば、「ウェブはバカと暇人のもの」を少し難しくした感じのです。ネットが一般家庭に普及し始めた2000年代初期にはネットこそ旧来のメディアを越える存在と言われてました。ネット言論?的なものも存在して、ネットでは他人に物を聴くと「ググれカス」と言われる時代が続きました。でも最近、特にボクはそうですが「ネットに正しい情報があるのか?」という事です。

これは本書の意見にも共通します。確かに、iPhoneの操作方法が分からない。とか、ゲームが難しくて攻略できない!なんて時にGoogleさんで検索すれば、一発で出してくれる。超便利です。

でも本当にネットに答えがあるのか?という事には疑問符が残るわけです。例えば、本書ではネットを亀の甲羅に例えて、1枚の甲羅の中では人気だけど、それを一歩はみ出れば殆どの人は知らない。という事を綴っているわけです。ただ、本書の内容に100%同意するか?と言われれば疑問で、簡単に要約すれば本書が伝えたい事は「ネットメディアも旧来メディアも見る方法が変わっただけで内容は一緒」と言う事を言っているわけですね。

●ネットでマスゴミのニュースを見る時代。

これは薄々気づいてました。つい数年前にはマスメディア。例えば、新聞やテレビに対して大バッシングがあったわけです。でもよく考えてください。皆さんは、どこでニュースを知りますか?という話です。本書によれば1位は「Yahooニュース」以下「goo」「livedoor」と続くそうですが、このニュースの大半は新聞社や通信社が配信したものです。最近では、グノシーやスマートニュースでレコメンドされた情報を見るという方も増えたと思いますが、それも以下同文ですよね。さらに言えば、コソボ問題は無かったというYahooニュースの伝説もありますが、読まれるニュースの大半がゴシップだそうです。ネットだから有益な情報を得ているか?と言われれば疑問です。

確かに、英語が読める人が今まで読めなかった海外のニュースを読んでいるという例外もありますが、、。

●天空の城ラピュタにおけるメディア論。

これは本書で一番面白かったし、なるほどっ!と思いました。皆さんもご存知のように、日本テレビの金曜ロードショーで毎年のように再放送される宮崎駿監督の「天空の城ラピュタ」です。その中で最後に発せられる禁断の呪文である「バルス」という言葉。(バルスの説明はいる?)ネット上では、その瞬間にTwitterで「バルス」とつぶやく事が恒例になっていて、全世界での瞬間ツイート数で新記録を樹立したほどです。でもですよ、表面的にはネットの革命でも著者の意見として「金曜日の夜に地上波を見てそういったつぶやきをするのって、今まで茶の間で家族でテレビを見ていたのがTwitterに変わっただけじゃん」という趣旨の事を語ってます。ネットがすごいネットがすごいではなく、結局はマスで流された情報を元に動いているだけという事になります。

●やっている事は劣化テレビ。

最近のテレビは規制が多いようで、トマトを投げるお笑い番組に批判が集まるそうです。確かに食べ物をイタズラに使う事はよくないですが、じゃあYouTubeやニコニコ動画が高貴なのか?と問われれば違う。例えば、著名YouTuberのHIKAKINなども大手食品会社の食品を紹介したり子供の遊びの延長をしているだけであって、何かYouTube上で革命的な事をしているわけではない。基本的に視聴者は子供であって、さらに言えばもっと子供。小学校低学年の子供を中心に見ているそうです。結果的に、そういった広告効果の薄い層では購買力が無いので、直近では広告のレートが大幅に下落している話もあるそうです。

ニコニコ動画も同じだと著者は言います。結局、再生されるのはMADや初音ミクであり、源流を辿ればテレビで放送された物そしてテレビで流れた音楽の再編集に留まると言います。

●意見は過激だが趣旨は正しい。

と思います。多少強引な部分もありますが、ネットが全て正しいという事は言えない。ただ、本書で残念だった点は結局、ネットもマスだしマスはマスのままという事なんですよね。じゃあより高貴で知的になるための別の手段が提案されているのか?というと、答えは違くて、うわっじゃあそっちに変えるわ!という驚きは無かったです。ネットどっぷりの人は拒否反応を示しますが、ちょっでもネットに疑問や不信感があれば面白いと思います。